ドクターからの健康アドバイス

掲載2  歯周病と原因

前回のコラムで、歯周病はある日突然、歯周病になるわけではなく徐々に進行する病気とお話しいたしましたが、今回は歯周病の原因について詳しく説明したいと思います。
ここで一つ質問です。皆さんがよく耳にする歯石は、歯周病の原因になるのでしょうか。まず歯周病の原因となるものには、直接的なものと間接的なものがあります。では、そちらをみていきましょう。

 

1. 歯周病の直接的原因

歯肉炎?歯周炎を含む歯周病の直接的な原因は、プラークと呼ばれる細菌の感染です。プラークとは、細菌の塊で1/1000gの中に1億を超える細菌が棲みついています。そして、唾液成分の糖タンパクが歯の表面に薄い皮膜(ペリクル)を作ります。その皮膜の上にくっついたミュータンス菌(むし歯菌)がショ糖を使ってグリコカリックスというネバネバした物質を作り自分の家づくりを始めます。すると棲みやすい場所ができたわけですから、口の中の細菌たちが家の中へ多量に侵入して、増えていきます。この状態をプラークといいます。またその細菌の集合体をバイオフィルムと呼びます。このバイオフィルムの中は、食べ物(栄養)や水も十分で、温度も37℃前後という大変よい環境です。なので細菌は常に活性化していて、細菌が産生する毒素が歯ぐきを腫らし、血や膿を出したり、歯の周りの骨を溶かしたりする歯周病の直接的な原因となります。バイオフィルムは、外からの抗菌薬(化膿止め)や唾液中の抗菌成分の攻撃に抵抗し、薬が効きにくい構造となっています。物理的でないと除去できません。そしてプラークが唾液や血液の無機質成分を吸って固まったものを、歯石と呼びます。歯石自体には病原性はないとされていますが、歯石の表面は粗造になっているためプラークの付着が容易で、歯周組織に炎症や破壊の刺激をもたらす主要な因子となります。以上の事からプラークや、歯石自体も歯周病の直接的原因の一つとなります。

 

2. 歯周病の間接的原因

歯肉炎?歯周炎を含む歯周病は、「口腔内の環境」や「生活習慣」にも間接的な原因となるリスクファクター(危険因子)が潜んでいます。では、どのような状態が歯周病にかかりやすいのでしょうか。歯周病にかかりやすくなる3つまたは4つの因子が知られています。

1)微生物因子(歯周病菌)
プラークの中の歯周病の原因となる微生物(歯周病菌)の存在です。口の中には300~700種類、1000億以上の菌がいるといわれています。

2)環境因子
?喫煙
?口の中の清掃不良
?初診時のポケットの深さ
?プラークの付着量
?ストレス
?口腔清掃教育の達成率
?食生活?専門医への受診回数 など
また、歯に合っていないプラークの溜まりやすい被せ物があることなども含まれます。さらに口呼吸、すなわち口で呼吸をする習慣のある人も、口の中の粘膜や歯ぐきが乾燥しやすくなり、炎症を起こしやすいのでこれに含まれます。

3)宿主因子
?年齢
?人種
?歯数
?糖尿病
?歯肉滲出液中の物質
?白血球機能
?遺伝 など
よく歯を磨かなくてもむし歯や歯周病にかかりにくい人がいます。その理由のひとつには、生まれつきの私達の体の特徴があります。例えば、体を守る防衛軍である白血球などの力、すなわち体の免疫機能の違いもあります。

4)咬合因子(環境因子に含む場合もあり)
悪いかみ合わせ(外傷性咬合)、例えば歯ぎしり(ブラキシズム)や歯の食いしばりなど、歯に強い負担がかかる状態などが含まれます。

 

図.  歯周病の発生環境

 

3. まとめ

このように、歯周病の原因には直接的と間接的があり、双方を念頭に置く必要があります。また、間接的原因の歯周病を引き起こしやすい状態の輪(各因子)が重複することで、歯周病発症の危険性が高まります。特に、歯みがきを怠る口の中の清掃不良に加えて喫煙などの生活習慣、過度のストレス、体調不良による宿主(体)の抵抗力の低下などが加わるととても危険になります。規則正しい生活習慣は、歯周病を寄せ付けないためにも大切な事です。生まれつき歯周病にかかりやすい方もいますので、自分の体についての情報を知る事も大切です。これを機に、歯に付着している細菌を除去することで口腔内細菌を低下させ、生活習慣の見直しをしていきましょう。

ドクタープロフィール

春日部 堀池デンタルオフィス 院長 堀池 将司 (ほりいけ まさし)

経歴

  • 明海大学歯学部 卒業。
  • 明海大学歯学部 研修医 修了の後、明海大学 保存修復学講座(歯内療法科)入局。
  • 埼玉県内の歯科医院および千住大橋歯科(東京都)を経て、現職。
  • 日本歯内療法学会 専門医、日本歯科保存学会 歯科保存治療 認定医、臨床歯科麻酔管理 指導医。
他のコラムを見る
TOP
【网站地图】【sitemap】