掲載4 歯周病予防と乳酸菌
コラム3では、歯周病が影響を及ぼす全身疾患は複数あり、そして相互関係もあるということを説明しました。コラム4では、歯周病と乳酸菌の関わりをみていきます。
ここで質問ですが、乳酸菌は良いものでしょうか。悪いものでしょうか。
1. 乳酸菌について
皆さんは、乳酸菌と聞いてどのようなイメージがあるのでしょうか。世間一般的に良いイメージのほうが多いような気がします。なので、歯周病予防にも絶対効果的と思われるかもしれません。果たしてそうでしょうか。
以前のコラムで、口腔内には500種類、1,000億以上もの細菌がいると説明しましたが、この中にも多数の乳酸菌が含まれています。そもそも乳酸菌というのは、代謝によって乳酸を産生する菌のことを指します。乳酸菌は、口腔内、腸、胃などの消化管など全身に広範囲に生育しています。
2. 乳酸菌の種類
では、乳酸菌にはどんな種類があるのでしょうか。食品にはヨーグルト、乳製品などに含まれる、ビフィズス菌、ガセリ菌、ラクトコッカス菌、ロイテリ菌などがあります。また他の発酵食品にも乳酸菌は含まれており、たとえば大和薬品の乳酸菌KDPHはキムチに生育する乳酸菌です。
一方、口腔内に関係のある菌には、慢性歯周炎の原因菌であるストレプトコッカス?インターメディウス、虫歯の原因菌であるミュータンス菌のストレプトコッカス?ミュータンス、虫歯の原因菌でさらに治療において薬剤耐性が高く虫歯が治りにくい菌であるエンテロコッカス?フェカリスなどがあります。
ここで皆さんお気づきだとは思いますが、乳酸菌は全ていいものではなく口腔内環境を悪化させる乳酸菌もいるということです。
3. 歯周病予防と乳酸菌の関係性
有効的な乳酸菌を摂取することで、体に良い菌を増殖させ、悪い菌を抑制します。これにより虫歯菌や歯周病菌の増殖を低下させる効果があります。そして、虫歯や歯周病予防につながり口臭も低下します。また、唾液の分泌量の促進にも影響するといわれており、唾液の持つ数多くの作用を活性化させてくれます。
4. 乳酸菌KDPH
乳酸菌KDPHは、Lactobacillus sakei (HS-1株)の加熱処理菌体で、発酵食品キムチから分離された乳酸菌です。この菌の注目すべきところは、生きた状態でなくとも、低用量で免疫に対する効果を発揮することです。
この特長により、健康食品として摂取するだけでなく、化粧品、動物用飼料の原料、歯磨き粉などの用途に幅広く使用することができます。
5. まとめ
冒頭で乳酸菌は体に良いものか、悪いものかをお聞きしましたがどちらも当てはまるといえます。口腔内や全身は、うまく菌が共存しあっています。この均衡が崩れると悪い影響を及ぼしてきます。もしかすると、乳酸菌は歯周病に良いからといって過剰摂取してしまうと、その乳酸菌の酸により歯が溶けたり、歯肉の炎症を起こす可能性があるかもしれません。なので、あくまでも補助という認識で、過剰な摂取は避けるべきだと思います。
良いものも使い方次第では悪いものへと変わるので、正しい知識をもち、摂取していきましょう。