ドクターからの健康アドバイス

掲載3  歯周病が全身に及ぼす影響

コラム2では、歯周病の原因は細菌だけではなく、多因子性疾患としての性質があるとお話ししました。コラム3では、歯周病が全身に及ぼす影響についてお話していきたいと思います。

 

1. 口腔内から全身への進行の仕方

では、歯周病がどのようにして全身に悪影響を及ぼすのでしょうか。コラム2でも説明したように、主にプラークと呼ばれる細菌が原因です。細菌が産生する毒素により、歯肉に炎症が引き起こされ口腔内環境が変化し、歯周病の症状が発症します。その後、口腔内だけに留まらず、細菌そのものや細菌による毒素、毒性物質による炎症が全身にひろがり様々な病気を引き起こしたり、悪化させる原因となります。
血行性のものには、細菌や細菌が産生する毒素、それに抵抗する炎症性物質が、歯肉にある毛細血管を通じて、全身の末梢血管にひろがり、さまざまな臓器に影響を与えます。また、食事時などに誤嚥してしまうことで、歯周病細菌が気管支に入り、肺に感染を起こします。
このように最初は口腔内から、そして全身に進行していきます。
次は病気の種類について、口腔内と全身の二つにわけて説明していきます。

 

2. 歯周病と口腔内疾患の種類

歯周病が関連する口腔内疾患にはなにがあるのでしょうか。
まず、よく耳にする知覚過敏という症状があります。歯肉の炎症が起こり歯周ポケットが深くなることで、本来歯肉に隠れているセメント質と呼ばれる根の部分が露出します。物理的な力でそのセメント質がはがれ、中の象牙質が露出し、外的刺激により神経に容易に刺激が伝達されることで、神経が過敏になり冷たい物を飲むなどの少しの刺激でも神経が感じ取ってしまう、知覚過敏を引き起こしてしまいます。
また、口臭の原因のほとんどは歯周病によるものとされています。深い歯周ポケットの形成により、空気が入りにくくなり、歯周病原性細菌が増殖し、臭いのもととなる硫化水素、メチルメルカプタン、ジメチルサルファイドなどの揮発性硫黄化合物が増加し、口臭が発生します。

 

3. 歯周病と全身疾患

次に、歯周病が関連する全身疾患と要因にはなにがあるのでしょうか。
下記の図に示しました。

 

 

注目していただきたいのは矢印の向きです。歯周病の方から矢印が出ている慢性腎臓病、低体重児出産?早産、肺炎?COPD、口腔がん?咽頭がん、心血管疾患などがあります。これらは、歯周病により病気が悪化するという報告があります。骨粗鬆症と喫煙は、歯周病を悪化させます。また、糖尿病、肥満?メタボリック症候群、認知症、関節リウマチなどは相互関係があります。

 

4. まとめ

歯周病の恐ろしいところは、歯肉の腫れや骨の減少だけでなく、口腔内や全身にまでひろがってしてしまうことです。そして多数の全身疾患に関与していることがわかっています。歯周病疾患の方は、健康な口腔内と比べ3倍もの心臓の血管疾患にリスクがあるともいわれています。当院に通ってくださっている患者様で、歯周病の治療をしていくことで、歯肉のブラッシング時の炎症が減り、糖尿病のHbA1cの値が低下した方もいらっしゃいます。
まずはできることから始め、日ごろの適切なブラッシング等で歯に付着している細菌を除去し、口腔内の細菌数を減らし、口腔内メンテナンスを意識していきましょう。

 
[参考文献]
1. 村上伸也、申基喆、齋藤淳、山田聡、編:臨床歯周病学 第3版、医歯薬出版株式会社、2020

ドクタープロフィール

春日部 堀池デンタルオフィス 院長 堀池 将司 (ほりいけ まさし)

経歴

  • 明海大学歯学部 卒業。
  • 明海大学歯学部 研修医 修了の後、明海大学 保存修復学講座(歯内療法科)入局。
  • 埼玉県内の歯科医院および千住大橋歯科(東京都)を経て、現職。
  • 日本歯内療法学会 専門医、日本歯科保存学会 歯科保存治療 認定医、臨床歯科麻酔管理 指導医。
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