ある種の好奇心は、高齢になっても増していくようです。好奇心とは一般に、新しい情報や環境を学び、経験し、探索したいという欲求のことを指します。これは、個人の比較的安定した性格的な傾向としての「特性好奇心」と、特定の物事に反応して情報を得ようとする一時的な「状態好奇心」に分けられます。新たな研究では、加齢に伴い「特性好奇心」は減退する一方で、「状態好奇心」は強まることが明らかにされました。米カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の心理学者であるAlan Castel氏らによるこの研究の詳細は、「PLOS One」に5月7日掲載されました。
Castel氏は、「心理学の文献によると、好奇心は加齢に伴い減退する傾向がある。」と話します。しかし、過去の研究結果の多くは、年齢と好奇心の関連を調査するにあたり、特性好奇心と状態好奇心の区別が十分に行われていなかったと研究グループは指摘します。
Castel氏らは今回、パイロット研究(対象者193人)と本研究(事前登録者1,218人)から成る2段階の研究を実施し、トリビア課題により状態好奇心を、アンケートにより特性好奇心を測定し、それぞれが加齢とどのように関連するのかを検討しました。
その結果、年齢は状態好奇心と正の関連を示す一方で、過去の研究結果と同様、特性好奇心とは負の関連を示すことが明らかになりました。これは、年齢が高くなるほど状態好奇心は強くなる一方で、特性好奇心は減退することを意味します。
Castel氏は、「本研究結果は、選択性理論に関する私の過去の研究の一部と一致している。この理論では、人は歳を重ねても、学びたいという気持ちを失うのではなく、学ぶ内容についてより選択的になるだけだと考える。」と説明しています。同氏はさらに、「生涯学習を見れば、この考え方が当てはまることが分かるだろう。実際、多くの高齢者が、教室で学び直したり、趣味やバードウォッチングを始めたりしている。このことは、このレベルの好奇心を維持することで、歳を重ねても頭の冴えを保てることを示していると思う。」と話します。
研究グループによると、人は中年期までは学校や仕事で成功し、家族を養い、経済的に安定するために必要な知識やスキルの習得に注力する傾向があります。これは、初期の好奇心を刺激する一方でストレスの原因ともなり、幸福感を損なう可能性もあるといいます。つまり、人は成長に必要な情報を得るにつれて、特性好奇心に割り当てるリソースが少なくなる傾向があるということです。しかし、子どもが独立して自分が定年を迎えると、個人的な関心ごとに時間やエネルギーを費やすようになり、その結果、状態好奇心が高まります。
Castel氏は、「人は、歳を重ねるにつれて大切なことに集中し、あまり重要でないことは忘れがちになるのかもしれない。私が話を聞いた高齢者の多くが、好奇心を持ち続けることは大切だと話していた。このことは、認知症の初期段階にある人は、かつて楽しんでいたことに無関心になる可能性があるという研究結果とも一致している。」と話しています。