概日リズムの乱れは認知症の初期兆候である可能性が新たな研究で示されました。概日リズムの相対振幅(最も活動的な時間帯と最も活動が少ない時間帯の差)が低く、リズムの断片化が進んでいることは、認知症リスクの上昇につながることが明らかになったといいます。米テキサス大学サウスウェスタン医療センター疫学?内科学分野のWendy Wang氏らによるこの研究の詳細は、「Neurology」に12月29日掲載されました。
Wang氏は、「概日リズムの変化は加齢に伴い起こる。また、概日リズムの乱れは、認知症のような神経変性疾患のリスク因子になり得ることを示すエビデンスがある。今回の研究で、休息?活動リズムのメリハリが弱く、断片化している人や、1日の遅い時間に活動量がピークに達する人では、認知症リスクの高いことが明らかになった」とニュースリリースの中で述べています。
体内時計とも呼ばれる概日リズムは、24時間周期の睡眠サイクルを調整しています。脳によって制御され、光への曝露からも影響を受ける概日リズムは、ホルモンの分泌や消化、体温などの身体機能の調整にも関わっています。Wang氏らによると、概日リズムが明瞭な人では、体内時計が24時間周期にうまく同調し、身体のさまざまな機能に明確なシグナルが送られるだけでなく、スケジュール変更や季節による日照時間の変化があっても、規則正しい睡眠サイクルが維持される傾向にあります。一方、概日リズムの相対振幅が低い人は、季節の変化やスケジュール変更によって体内時計が乱れやすいといいます。
Wang氏らは今回の研究で、平均年齢79歳の男女2,183人の追跡データを分析しました。研究開始時点では、認知症を発症していた参加者はいませんでした。全ての参加者に胸に貼り付けるタイプの小型の心臓モニターを平均で12日間装着してもらい、概日リズムに関するデータを収集しました。その後、参加者を中央値で3年間追跡しました。その間に176人(8%)が認知症と診断されました。モニターの測定データから、昼と夜の活動のメリハリを示す相対振幅、生活リズムの断片化(乱れ)を示す日内変動、日々のリズムの一貫性(規則性)を示す日間安定性を算出し、参加者の休息-活動リズムを評価しました。
その結果、相対振幅の1標準偏差(SD)の減少および日内変動の1SDの増加は、それぞれ認知症リスクの54%(95%信頼区間32~78%)、および19%(95%信頼区間2~38%)の増加と関連していました。また、相対振幅を三群に分けて解析したところ、相対振幅が低い群では727人中106人が認知症を発症していたのに対し、高い群では728人中31人にとどまっていました。年齢や血圧、心疾患などを調整した解析では、低い群の認知症リスクが、高い群に比べて約2.5倍高いことが示されました。さらに、概日リズムのピークが午後の遅い時間に現れる人も、認知症のリスクが高く、具体的には、活動量のピークが午後2時15分以降に現れる人では、ピークが午後1時11分から2時14分の間の人と比べて認知症のリスクが45%高かったといいます。活動量のピークが遅いことは、体内時計が季節による光の変化と同調できていない可能性があることを意味しています。
Wang氏は、「概日リズムの乱れは炎症などの生体プロセスの変化を招いたり、睡眠を妨げたりする可能性がある。さらに、認知症に関連するアミロイド斑の増加、あるいは脳内のアミロイド除去の減少につながる可能性が考えられる」と述べています。その上で、「光療法や生活習慣の改善といった概日リズムへの介入が認知症リスクの低下に役立つかどうかを検討するため、今後さらなる研究が必要だ」と付け加えています。